■あらすじ
あれから数年、池中玄太(西田敏行)一家は、平和に暮らしていた。
暁子(坂口良子)は喫茶店をまかされ、妻と母親の役を両立させて、今や一家は彼女を中心にまわっている。
長女の絵理(杉田かおる)は専門学校を出て、幼稚園の保母になった。子どもの親たちの評判もよいのだが、そろそろ年ごろ。玄太としては大いに気がもめる。こんなかわいい娘を何処かの馬の骨にとられてしまうなんて、考えただけで気が狂いそうだ。
未来(有馬加奈子)は短大生、ボーイフレンドも多いらしく、これがまた玄太の悩みのタネ。そして、末っ子の弥子(安孫子里香)も、もう中学生。
一番変わらないのは玄太かもしれない。娘たちもそれぞれ成長し、暁子が家の中をうまくまとめてくれているのに、例の早合点と心配症の癖はいっこうになおらない。
しかも、つとめ先の大京グラフは最近、同種の写真誌フォーカスやフライデーに押され気味。新しい編集長・柏木(小林克也)はスキャンダルばかり追うようになったため、抒情的タッチの玄太には気の進まない仕事が増えた。同僚のカメラマン・前川(三浦洋一)や杉野(井上純一)が割り切って仕事しているのも、玄太には腹が立つ。その前川は依然として独身、杉野にはやっと新しい恋人が出来、カメラの腕もあがった。
新潟から久しぶりに本城(宇野重吉)と春江(丹阿弥谷津子)夫婦が訪れた。中国雲南省の奥地に群棲するトキの学術探険隊の結成準備が、本城の目的だった。その写真部員として玄太を推せんするつもりだ。
トキの生態観察と聞いて、玄太は矢も楯もたまらず、編集長に相談するが、今の大京グラフに鳥の写真など必要ない、どうしても撮りたければ辞表を出してからにしろと、つれない返事。
玄太は絵理のようすがおかしいのに気づいた。どうも好きな男が出来たらしい。園児の父親で歯科医の奥村(三浦友和)だった。
奥村は妻に死なれ、目下やもめ暮らし。絵理とは15も歳が違う。ショックを受けた玄太は、奥村のところへどなり込み、絵理とは二度と会わない約束をとりつけたことから、玄太と絵理の仲は険悪。絵理はついに家を出、ひとりアパート住まいを始めてしまった。
一方、大京グラフの不振に焦った柏木は、ヤラセのスクープ写真をでっちあげた。たちまち非難の槍玉にあがり、柏木は解職。グラフも廃刊の危機。
玄太は前川らと相談して、元編集長の楠(長門裕之)をかつぎ出す計画をたて、社長(山本耕一)に直訴した。
湘南で妻・歌子(松尾和子)、ひとつぶダネの太樹(斉藤亮太)とともに悠々自適の生活を送る楠は、初めこそ渋ったものの、ただのスクープを売り物にせず、かつての健全なグラフにもどすという条件で、出馬を決意した。
楠の復帰により、玄太のトキ学術探険隊参加はほとんど決定となった矢先、かんじんの本城が脳血栓でたおれた。春江のけんめいの看病、かけつけた玄太や暁子、それに絵理たちの祈りも空しく、本城はかえらぬ人に。
恩師の死に玄太は茫然、トキの写真を撮る気になれなくなった。いくらすばらしい写真を撮っても、本城に見てもらえなくては意味がない。
そんな玄太を一番心配したのは、暁子と絵理だった。絵理は奥村との結婚をあきらめようとしているようす。暁子の心は揺れ動いた。子持ちの男との結婚に反対するなら、なぜ自分を嫁にもらったのだろうか。
しかし、玄太には玄太の思いがあって……。
◆出演
西田敏行、坂口良子、三浦洋一、長門裕之、松尾和子、丘みつ子、丹阿弥谷津子、三浦友和、宇野重吉
◆スタッフ
【原案・脚本】松木ひろし
【音楽】坂田晃一
【演出】石橋冠