「小杉ゆけむり温泉郷」
年中、濃い湯けむりに包まれている某県山間の小さな町、小杉町は、親しみを込めて、そう呼ばれていた。
その中心に建つ「小杉屋」は、明治時代から営業を続ける老舗温泉旅館だ。
本日は改装を終えた本館のお披露目式。大広間には、地元の名士や関係のある著名人たちが参席していた。やがて小杉屋の社長がステージへ上がり、各方面へ開会のあいさつを述べ始める。と同時に周囲から、ひときわ濃厚な湯けむりが湧き始めた。あっという間に視界が奪われていく。
そして、湯けむりが晴れていく。
町議会議員。小説家。人気配信者。そして社長と従業員。
その場に立ち尽くす五人の目に映ったのは、信じられない光景だった。
彼らは、青白い光に満たされた、本館の客間にいた。他に、参加者の姿は見えない。たしか、私たちは大広間にいたはず。あまりにも異常な状況に固まる五人の頭上から声が聞こえてきた。
「ここは、一年前の小杉屋です」
声の主は小杉屋の番頭だった。だが彼は一年前、この旅館の大浴場で溺死したはずだ。番頭は続ける。
「ええ、お察しの通り、私は幽霊。手で湯船に頭を浸けられて殺されました。あの夜、大浴場にいたあなた方、5人の誰かに殺されたんです。私はその犯人を知りたい。だから、私が地獄に落ちるまでの一時間、話し合って犯人を決めてください。犯人が決まれば、私はその方と地獄へ落ちましょう」
どうやら、他に選択肢はないようだ。
こうして、一年前の温泉旅館を舞台に、奇妙な話し合いが始まった……
◆出演
新井雄也/稲垣成弥/平野良/松田岳/湯本健一(出演者は50音順)
ゲームマスター:諸岡航平
◆スタッフ
脚本:小林欣也